ささくれと親不孝
子供の頃、指にささくれ(ささむけ)が出来ると母から怒られた。
「あんたが親不孝だから、ささくれが出来るんだ。もっと親孝行出来る娘になりなさい」と。
“親不孝だとささくれが出来る”というのは、“夜に口笛を吹くと泥棒が来る”的な迷信なんだろうけど、子供だった私は母の言う事を間に受けていた。
ささくれが出来るたびにお母さんの為にもっと頑張らなきゃと思っていたけど、今となってみれば、これ以上の不条理はない気がする。
左手の指にささくれが出来た。
ネイルケア用のハサミで丁寧に切る。
グリーンノートの香りのハンドクリームを塗りながら過去を思い出した。
私は子供の手にささくれが出来ても、親不孝だと言って怒ったりなんかしない。
「痛かったね」って言って、ハンドクリームを塗ってあげるお母さんになる。